5-3 対面カウンセリング



パーソナルスタイリストのサービスにおいて、もっとも重要なのは「対面カウンセリング」です。

ここでお客さまの悩みをしっかりと理解することができれば、のちのショッピング同行はスムーズに行うことができます。

一方、対面カウンセリングをしっかり行わない状態でいくらおしゃれな服をおすすめしたとしても、それはただの「スタイリストの押しつけ」に過ぎません。

人それぞれ、ファッションにおける悩みは異なります。そしてファッションを変えることで、どのように変わりたいのかもまったく違います。

なぜお客さんはスタイリストに依頼をしてまでファッションを変えたいと思ったのでしょうか?お客さまの動機をしっかりと理解しなければ、スタートラインにすら立てません。

カウンセリングとは「対話」である


「カウンセリング」という言葉を使うと、どうしても堅苦しいというか、まるで心理カウンセラーのようなイメージを持つ方もいるかもしれません。でもそれは誤解です。もっとラフなものを想像してください。

カウンセリングというよりも、「ふつうの会話」に近い感覚です。お客さまとカフェで会話をしながら、どんどん質問を投げかけていく。会話の比率は7:3、お客さまにたくさん喋ってもらうことが大切です。

僕たちの役割というのは、質問を投げかけることで、お客さんに「自分はこういうことに悩んでいたんだ」「こういうファッションに変わりたいんだ」ということに、気づいてもらうことです。

続いて、お客さまとの出会いのシーンから、どのような質問を投げかけて、どのようにカウンセリングを締めくくるのか。全体の流れを見ていきましょう。

カフェで待ち合わせ




まずはお客さんとの待ち合わせです。待ち合わせ場所には、静かなカフェを選びましょう。できればちょっとおしゃれなところがいいですね。静かで、あまり混まなくて、会話がしっかりとできるカフェを探してください。

カフェではなく、ホテルのラウンジでも構いません。「自分のホーム」と呼べるようなカフェを見つけるが大切です。参考までに僕が都内で使っているカフェとホテルラウンジをご紹介します。

▼バーニーズカフェ
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13232812/

▼コートヤードバイマリオットのラウンジ
https://www.tobuhotel.co.jp/ginza/restaurants/oasis.php

こちらは土日でもそんなに混んでいませんので、ゆったりと会話ができます。コーヒー代は高いですが、あくまで「場所代」だと割り切ってください。ちなみにコーヒー代はこちらが負担するようにしてください。

意外とカフェ探しには苦戦すると思います。僕も散々探して行き着いたのがこちらの2つです。今でも常に良さそうなカフェやホテルラウンジがないかを探しています。みなさんも徹底的にリサーチしてください。

初対面のあいさつ




カウンセリングでお客さんとお会いするときには、初対面ですので、お互いに緊張しています。なるべく和やかな雰囲気で進められるように、笑顔で出迎えてください。

ギリギリの時間にカフェに入るのではなく、少なくとも15分前にはカフェで待っているようにしましょう。お客さまが席に付いたら、メニューを選びます。「何か飲みながらお話をしましょう」と伝えるといいですね。

そして次に自己紹介をします。

「今回はお声を掛けていただきましてありがとうございます。スタイリストの大山 旬です。宜しくお願いします」このような感じで良いでしょう。

続いて、今回のカウンセリングではどんなことを行うのかについて、簡単にお客さまに解説します。

「今回のカウンセリングでは、◯◯さんがどんなファッションの悩みをお持ちなのか、またどのようなファッションに変わりたいのかを伺わせていただきます。なんでも気になることがありましたら質問してくださいね」

このように伝えてみてください。

カウンセリングでの質問例


スタイリストが投げかける質問例をいくつかご紹介します。こちらはあくまで基本です。これを参考にしながら、あなたが使いやすいようにカスタマイズしてください。

「私のことはどのようにして見つけられたのですか?」

この質問をすることで、どの集客活動が成果に繋がったのかを知ることができます。お互いの緊張を解くために、ちょっとした会話の糸口として使うのも良いでしょう。

僕の場合、「世の中にはたくさんスタイリストがいるのですが、その中でよく地味な僕のことを見つけて頂きましたね!」と笑いながら会話をしています。会話の始めに、少し笑いが起こると、その後がスムーズに進みやすくなります。

「今回、ファッションを変えてみたいと思ったきっかけはなんですか?」

ここからが本番です。お客さまの「ファッションを変えようと思った動機」を掘り下げることはとても大切です。このような回答が予想できます。

・仕事の転機を迎えた(昇進・転職)
・婚活目的
・もっとモテたい
・コンプレックスを克服したい
・ビジネスでのブランディング目的

おそらくこの5つくらいに集約されるかと思います。

実際、お客さま自身も、なぜサービスを受けようと思ったのか、理由がぼんやりとしたままの方も多いです。このように質問を投げかけることで、お客さまの目的意識が明確になります。

実際のスタイリングでは、こちらで明確になった「お客さまの目的」に合わせて服を選んでいきます。ここは時間を掛けてじっくりと掘り下げてみてください。

「ファッションにおける悩みはありますか?」

誰もがファッションにおける悩みを抱えています。わざわざプロに頼むくらいですから、何か解決したい悩みがあるはずです。それを明確にすることで、ショッピング同行の際にも活かすことができます。

たとえば・・・

・足が短いのが気になる
・背が低い
・太っている
・センスに自信がない
・服を選ぶ時間がない

このような回答が想定されます。スタイリングの際には、この悩みを解決するための方法もしっかりと伝えると良いでしょう。

たとえば、お客さまが足が短いのを気にしていると仮定します。そういう場合には・・・

「細身のブラックジーンズに黒のスニーカーを合わせると、遠目から見ると、ボトムスと靴が一体化して脚長効果が出せるんです」と言った具合に、コンプレックスを解消するための方法を伝えるようにしてください。

実際のスタイリングの際に、「どうしてこの服がいいのか」「どのようにコーディネートすればいいのか」をしっかり伝えることで、お客さまの満足度は高まります。

アパレル店員のような、「トレンドが〜」「レイヤードが〜」というような、分かりにくい言葉、曖昧な表現を使うのはNGです。お客さんが理解できる言葉で伝えてください。

「いつもどこで服を買っていますか?」

お客さんがいつもどこで服を買っているのかを事前に知ることで、服にどれくらいのお金を投資できるのかが見えてきます。

たとえば、いつもユニクロやGUで買い物をしている人に、いきなりデザイナーズブランドの服を提案するのは無理があります。一方で、今現在セレクトショップで買い物をしている人に、同じようなセレクトショップの服をおすすめしたとしても、そこに驚きがありません。

大切なのは、いつも買っている服の1.5〜2倍くらいの価格帯の服を提案することです。安くてもダメですし、高すぎるのもダメです。事前によく買うお店を理解しておくことで、しっかりと準備をすることができます。

「どのような服が苦手ですか?」

誰にでも好きな服と嫌いな服があります。特にやっかいなのが「苦手な服」です。どんなに似合っていたとしても、本人が苦手意識を持っていたとしたら、それを覆すのは難しいです。

たとえばボーダーのTシャツについて「ドロボーみたいに見えるから苦手・・・」というイメージを持っていたら、それを覆すのは難しいです。そういう場合はあえて提案しないようにしましょう。

お客さんも不安なのです。見ず知らずの人に自分のファッションを任せるのですから。どんなファッションに変わるのだろう。ワクワク半分、怖さ半分の状態です。

そこで苦手な服を提案されたら、一気に不安の方が大きくなってしまいます。ですので、事前に苦手な服を理解しておくことは大切です。

「どのようなファッションに変わりたいですか?」

そして最後、もっとも重要な質問です。お客さまはどんなファッションを目指しているのか。これを明確にしておくことが大切です。

とは言っても、お客さんも、漠然とした、なんとなくのイメージしか持っていないことが多いです。ここをなるべく具体的に言葉で表現してもらう。もしくは写真を見ながら、イメージを明確にすることが大切です。

■清潔感の漂うファッション
■信頼感を高めたい
■センスよく見られたい
■女性からの印象を良くしたい

このような回答が想定されます。

大切なのは、本人に自覚してもらうことです。質問をされて、実際に言葉にすることで、「自分はこういうファッションになりたいんだ」ということを意識するようになります。これがとても大切なのです。

言葉ではなかなかイメージが付かない場合は、写真を見せてください。雑誌を持っていくのもいいですし、良さそうなコーディネートの写真をスマホやPC、もしくはタブレットに保存しておいて、お客さんに見てもらうのも良いでしょう。

このように具体的な写真があることで、お客さんもイメージがしやすくなります。目標地点が定まれば、提案はグッとしやすくなります。この質問も必ず行うようにしてください。

カウンセリングをしながら、問題解決をする




一通りの質問を投げかけたら、カウンセリングは終了です。お客さまの話はしっかりとメモ帳に書き留めておきましょう。

ちなみに、質問を投げかけるだけではなく、問題の解決方法についてもお客さんに伝えてあげることも大切です。

たとえば、「背が小さいのが悩みだ」というお客さまには、

「ゆったりめのサイズ感の服だと、どうしても縦長に見えないので、スタイルが悪く見えます」

「細身のボトムス、少し底が厚めのスニーカーで縦長感を出すといいですね」


このように具体的な解決方法をお伝えすると良いでしょう。

または、「服のお店が分からないので、いつもユニクロで買っています」というお客さまには・・・

「ユニクロはベーシックな服が揃っているので悪くないですが、それだけではおしゃれに見せるのは難しいです」
「ユナイテッドアローズやエディフィスなどがおすすめです」


このように、正解をズバッと伝えてしまうのです。カウンセリングを通して、お客さまに大きな気付きを与えられるかどうかはとても大切です。

僕もカウンセリングでは、お客さんの悩みや目的をしっかりと聞きながら、「こうすればいいですよ」という解決策を惜しみなく伝えるようにしています。

そうすると、お客さんは「この人にお願いすれば、きっとおしゃれになれるに違いない」と信頼してくれるようになります。せっかく貴重な時間を使って、会いに来てくださったのですから、与えられる知識は、すべて出し切る覚悟を持ってください。

クロージングはしつこいのはNG


最後にクロージングです。

一通りのカウンセリングとアドバイスを終えたら、ショッピング同行について簡単に説明してください。あまりガッツリ営業をしてしまうと、お客さまは引いてしまうので、さらりと解説するくらいで丁度いいです。

「今回のカウンセリングを受けて、自分で買い物してみるのもいいと思います。でも自分ではまだおしゃれな服を選ぶ自信がないという場合は、”ショッピング同行”というサービスもありますので、一度受けてみるといいかもしれませんね」

「ショッピング同行を受けてもらうことで、どこのお店で、どういう服を買えばいいのかが分かるようになります。そうすれば、スタイリストがいなくても服選びができるようになりますよ」

「自分で買い物すると、どうしても時間も掛かりますし、無駄な買い物も増えてしまいます。スタイリストを付けることで、効率的に服が買い揃えることができますよ」


このような形でサービスのメリットを伝えてみてください。きっとこの時点で多くの人があなたのサービスに興味を持つはずです。こちらから「あえて」値段は伝えず、お客さまから尋ねられたら初めて値段をお伝えするのが理想的です。

一通りの説明をした後、その場でお申し込みいただける時もありますし、「またメールでご連絡ください」という形で締めくくるのでも良いです。

正直、お客さまがサービスに興味を持つかどうかは、カウンセリングの満足度によって決まります。あくまでクロージングはさらりと、ちょっとそっけないくらいで丁度いいです。

カウンセリングから、およそ5割前後の確率でショッピング同行へと進むはずです。あえてサービスを買ってもらいたいとは考えず、お客さまに役立つ情報をどんどんお伝えして、満足度を高めることに集中してください。

それが最高の営業活動になるはずです。

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